今回の目標は仮説 A' を有限体の言葉で表現することです. 仮説 A' とは, 以下の命題のことでした:
次の命題が成り立ちます:
方程式 \[ x^2 + y^2 \equiv 0, \quad x \not\equiv 0, \quad y \not\equiv 0 \,\,\, \pmod{p} \] をみたす有理整数 \(x \), \( y \) をとり, \[ X := [x], \quad Y := [y] \quad \left( \, \in \mathbb{Z} / p \mathbb{Z} \, \right) \] と置きます. このとき, \[ X^2 + Y^2 = [0], \quad X \neq [0], \quad Y \neq [0]. \] 左端の式の両辺に \( (Y^{-1})^2 \) をかけると(\( \mathbb{Z} / p \mathbb{Z} \) は体でした), \[ \left( X Y^{-1} \right)^2 + [1] = [0]. \] これで示されました. (証明終)
方程式 \[ X^2 + [1] = [0] \tag{*} \] をみたす \( X \in \mathbb{Z} / p \mathbb{Z} \) をとり, \[ X = [x], \quad x \in \mathbb{Z} \] とします. 等式(*)より, \( X \neq [0] \) なので, \[ x \not\equiv 0 \pmod{p} \] となっています. また, 式(*)に \( X = [x] \) を代入すると, \[ [x^2 + 1] = [0] \] が得られますが, これを合同式に書き換えると, \[ x^2 + 1^2 \equiv 0 \pmod{p} \] となります. これは, 結論の成立を意味します. (証明終)
上の命題により, 仮説 A' は次のように言い換えられます:
不思議な感じがしますが, 整数という無限の世界の問題であったはずの仮説 A が, 有限体という有限の世界の問題に置き換わってしまいました. 私たちは次回以降, この仮説 A'' の証明を目標とします.