球面と平面を対応付ける方法の一つに立体射影と呼ばれるものがあります. 上の図で, 点Pに点Qを対応付ける(直線NPと平面の交点がQ), という方法です. 例えば球を地球と考えれば, 平面の上に世界地図を描くことができるでしょう.
私たちはアポロニアン・ガスケットの第0世代の円を描き終えました. 続けて第1世代の円, 第2世代の円, … と描いていきたいのですが, これらの作図を見通しよく行うには”反転”という道具が必要になります. この道具は立体射影についての考察の先に存在しているので, 私たちはここで一旦方向を変え, ”反転”を手に入れるべく立体射影の世界に足を向けたいと思います.
さて, まずはこの写像が球面と平面を対応付けている様子をおおまかに描いてみます.
経線は円に, 緯線は直線に写っています. また, 両者が平面上で直交していることも観察されます.
目で見て分かることはこれだけですが, この図を描いたおかげで, 私たちはさらにもう一歩足を踏み出すことができます. というのは, 次のような問いが自然と生まれてくるからです.
- 一般的な球面上の円は平面上のどのような図形に写るのだろうか?
- 球面上の2つの円の交わりの角は, 立体射影によって保存されるのだろうか?
この問いが次のような立体射影の性質の発見へと私たちを導きます.
- (円円対応) どのような球面上の円も必ず平面上の円か直線に写る.
- (等角性) 球面上の2曲線のなす角は立体射影によって保存される.
この発見は私たちにとって重大な意味をもちます. 何故なら, 立体射影のこの2性質が”反転”に円円対応と等角性をもたらすからです. ”反転”が有用である理由は, まさにこの2性質にあります.
”反転”とは, 立体射影を通してある平面に関する球の対称変換を見たものなのですが, その詳しい説明は次回と次々回で行いたいと思います.