\(n\) 次元射影空間の射影変換は \(n+2\) 点の行き先で決まる(1)

\( \newcommand{\calF}{\mathcal{F}} \newcommand{\calG}{\mathcal{G}} \newcommand{\e}{\varepsilon} \newcommand{\i}{\iota} \newcommand{\l}{\lambda} \newcommand{\p}{\pi} \newcommand{\ph}{\varphi} \newcommand{\phinv}{\varphi^{-1}} \newcommand{\phiinv}{\phi^{-1}} \newcommand{\all}{\forall} \newcommand{\brc}[1]{\left\{ #1 \right\}} \newcommand{\cc}{\circ} \newcommand{\col}{\, \colon \,} \newcommand{\cd}{\cdots} \newcommand{\equ}{\, \Leftrightarrow \,} \newcommand{\ex}{\exists} \newcommand{\fr}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{\hto}{\hookrightarrow} \newcommand{\ld}{\ldots} \newcommand{\mto}{\mapsto} \newcommand{\iso}{\overset{\sim}{\to}} \newcommand{\opl}{\oplus} \newcommand{\Opl}{\bigoplus} \newcommand{\prn}[1]{\left( #1 \right)} \newcommand{\ptm}[1]{\phantom{#1}} \newcommand{\set}[2]{\left\{ #1 \mathrel{} \middle| \mathrel{} #2 \right\}} \newcommand{\sm}{\setminus} \newcommand{\ss}{\subset} \newcommand{\tod}{\downarrow} \newcommand{\tou}{\uparrow} \newcommand{\thf}{\therefore} \newcommand{\surj}{\twoheadrightarrow} \newcommand{\uhto}[1]{\overset{#1}{\hookrightarrow}} \newcommand{\usurj}[1]{\overset{#1}{\twoheadrightarrow}} \newcommand{\uto}[1]{\xrightarrow{#1}} \newcommand{\zrset}{\{ 0 \}} \DeclareMathOperator{\Hom}{Hom} \DeclareMathOperator{\Im}{Im} \DeclareMathOperator{\Ker}{Ker} \)

1.

以下, ベクトル空間はすべて, ある固定された体 \( K \) 上のものである.

2.

後に用いる命題を示すため, 「全射全射であり続けるための条件は何か?」という問題を考える.

問い: \( U \), \( V \), \( W \) をベクトル空間とし, 線形写像の合成 \[ U \uto{f} V \uto{g} W \] を考える. このとき, \[ \Im (g \cc f) \ss \Im g \] であるので, 合成 \( g \cc f \) が全射であれば, \( g \) も全射である. しかし, \( g \) が全射であるからといって, 合成 \( g \cc f \) が全射になるとは限らない. どのような条件があれば, 合成も全射となるだろうか?

次が答えである: \( g \) が全射であるという条件のもと, \[ \text{\( g \cc f \) が全射} \equ \Im f + \Ker g = V. \]

証明: \begin{align} \text{\( g \cc f \) が全射} &\equ \all v \in V \,\, \ex u \in U, \, g(v) = (g \cc f)(u) \\[0.8em] &\equ \all v \in V \,\, \ex u \in U, \, v - f(u) \in \Ker g \\[0.8em] &\equ \Im f + \Ker g = V \end{align} である. //

系: ベクトル空間と線形写像からなる次の図式を考える: \[ \begin{matrix} U_1 & \uto{f_1} & V_1 & \usurj{g_1} & W_1 \\[0.5em] & & \ptm{ \phi } \tod \!\! \wr \,\,\, \phi & & \\[0.5em] U_2 & \uto{f_2} & V_2 & \usurj{g_2} & W_2 . \end{matrix} \] ここで, 2つの系列 \[ U_i \to V_i \to W_i \quad (i = 1, 2 ) \] は完全であり, \( g_1 \), \( g_2 \) は全射, \( \phi \) は同型である. このとき, 合成 \[ \begin{matrix} U_1 & \uto{f_1} & V_1 & \ptm{\usurj{g_1}} & \ptm{W_1} \\[0.5em] & & \ptm{ \phi } \tod \!\! \wr \,\,\, \phi & & \\[0.5em] \ptm{U_2} & \ptm{\uto{f_2}} & V_2 & \usurj{g_2} & W_2 \end{matrix} \] 全射であれば, 合成 \[ \begin{matrix} \ptm{U_1} & \ptm{\uto{f_1}} & V_1 & \usurj{g_1} & W_1 \\[0.5em] & & \ptm{ \phiinv } \tou \!\! \wr \,\,\, \phiinv & & \\[0.5em] U_2 & \uto{f_2} & V_2 & \ptm{\usurj{g_2}} & \ptm{W_2} \end{matrix} \] 全射である.

証明: \begin{align} \Im (\phi \cc f_1) + \Ker g_2 = V_2 &\equ \Im (\phi \cc f_1) + \Im f_2 = V_2 \\[0.8em] &\equ \Im f_1 + \Im (\phiinv \cc f_2) = V_1 \\[0.8em] &\equ \Ker g_1 + \Im (\phiinv \cc f_2) = V_1 \end{align} であり, 最初の条件は仮定により成り立つ. //

3.

さて, 今回は標題のことを示すための準備である.

4.

用語と記号:

\(\color{red}{ \diamondsuit } \, \) 以下, 「直線」とは, 1次元部分空間のことである.

\(\color{red}{ \diamondsuit } \, \) \( n \) 次元ベクトル空間 \( V \) の \( n+1 \) 本の直線が一般の位置にあるとは, その中のどの \( n \) 本も \( V \) を生成することである.

\(\color{red}{ \diamondsuit } \, \) ベクトル空間 \( V \) から \( W \) への線形写像全体を \[ \Hom(V,W) \] で表す. これには自然にベクトル空間の構造が入る.

5.

次を証明したい.

\( n \) 次元ベクトル空間 \( V \) に, 一般の位置にある \( n+1 \) 本の直線 \[ V_1, \quad \ld, \quad V_{n+1} \] が与えられており, ベクトル空間 \( W \) に, \( n+1 \) 個の有限次元部分空間 \[ W_1, \quad \ld, \quad W_{n+1} \] が与えられているとする. このとき, \( \Hom(V,W) \) の部分空間 \[ \calF := \set{F \in \Hom(V,W)}{F(V_i) \ss W_i \quad (1 \le i \le n+1)} \] に対して, \[ \dim \calF = \sum_{i=1}^{n+1} \dim W_i - \dim \prn{ \sum_{i=1}^{n+1} W_i } \] が成り立つ.

6.

証明:

1. \( V \) の \( n+1 \) 本の直線 \[ V_1, \quad \ld, \quad V_{n+1} \] のそれぞれに対して基底を1つ選び, それを \[ v_1, \quad \ld, \quad v_{n+1} \] とする.

\( n \) 次元空間の \( n+1 \) 個のベクトル \( v_1 \), \( \ld \), \( v_{n+1} \) は一次従属であるので, ある非自明な関係 \[ a_1 v_1 + \cd + a_{n+1} v_{n+1} = 0 \] が存在する.

このとき, \( V_1 \), \( \ld \), \( V_{n+1} \) が一般の位置にあるという仮定により, \[ a_i \ne 0 \quad (1 \le \all i \le n+1) \] である.

2. \( W_1 \), \( \ld \), \( W_{n+1} \) の和空間を \[ W' :=W_1 + \cd + W_{n+1} \] とおく.

単射線形写像 \[ \i \col \Hom(V, W') \hto \Opl_{n+1} W', \quad F \mto \bigl(F(v_1), \, \ld, \, F(v_{n+1}) \bigr) \] を考える.

また, 全射線形写像 \[ \e \col \, \Opl_{n+1} W' \surj W', \quad (w'_1, \ld, w'_{n+1}) \mto a_1 w'_1 + \cd + a_{n+1} w'_{n+1} \] を考える.

3. 系列 \[ \Hom(V, W') \uhto{\i} \Opl_{n+1} W' \usurj{\e} W' \] は完全である.

なぜなら: \( \Im \i = \Ker \e \) を示せばよいが, これは次の2点から従う:

  • \( \Im \i \ss \Ker \e \),
  • \( \dim (\Im \i) = \dim (\Ker \e) \).

前者は \( \i \) および \( \e \) の定義から.

後者は, \( \dim W' = k \) とすると, \[ \left\{ \begin{align} &\dim (\Im \i) = \dim \bigl( \, \Hom(V, W') \, \bigr) = nk, \\[0.8em] &\dim (\Ker \e) = (n+1)k - k = nk \end{align} \right. \] であるので. //

4. 次の図式を考える: \[ \begin{array}{ccccl} W_1 \opl \cd \opl W_{n+1} & \hto & \displaystyle \Opl_{n+1} W' & \usurj{\p} & \prn{\displaystyle \Opl_{n+1} W'} / \prn{ W_1 \opl \cd \opl W_{n+1} } \\[0.5em] & & \parallel & & \\[0.5em] \Hom(V, W') & \uhto{\i} & \displaystyle \Opl_{n+1} W' & \usurj{\e} & W' . \end{array} \]

\( W' \) は \( W_i \) たちの和であるので, 合成 \begin{gather} W_1 \opl \cd \opl W_{n+1} \hto \Opl_{n+1} W' \usurj{\e} W', \\[0.8em] (w_1, \ld, w_{n+1}) \mto a_1 w_1 + \cd + a_{n+1} w_{n+1} \end{gather} は全射である.

準備しておいた命題によって, 合成 \begin{gather} \Hom(V, W') \uhto{\i} \Opl_{n+1} W' \usurj{\p} \prn{ \Opl_{n+1} W'} / \prn{ W_1 \opl \cd \opl W_{n+1} }, \\[0.8em] F \mto \p \bigl( \, F(v_1), \ld, F(v_{n+1}) \, \bigr) \end{gather} も全射である.

5. この合成の核は, \[ \calF = \set{F \in \Hom(V, W')}{ F(V_i) \ss W_i \quad (1 \le i \le n+1)} \] であるので, 次元定理により, \[ nk = \dim \calF + \brc{(n+1)k - \sum_{i=1}^{n+1} \dim W_i}. \] ただし, \( \dim W' = k \) とおいた.

これより, 求める結果 \[ \dim \calF = \sum_{k=1}^{n+1} \dim W_i - \dim W' \] を得る. //

6.

我々が必要とするのは, 次の特別な場合である.

系:

\( n \) 次元ベクトル空間 \( V \) と \( W \) のそれぞれに, 一般の位置にある \( n+1 \) 本の直線 \[ V_1, \quad \ld, \quad V_{n+1} \] および \[ W_1, \quad \ld, \quad W_{n+1} \] が与えられているとする. このとき, \( \Hom(V,W) \) の部分空間 \[ \calF := \set{F \in \Hom(V,W)}{F(V_i) \ss W_i \quad (1 \le i \le n+1)} \] に対して, \[ \dim \calF = 1 \] が成り立つ.