有限可換環の非可逆元と零因子

\( \newcommand{\ZZ}{\mathbb{Z}} \newcommand{\r}{\rho} \newcommand{\all}{\forall} \newcommand{\cc}{\circ} \newcommand{\col}{\, \colon \,} \newcommand{\cd}{\cdots} \newcommand{\equ}{\, \Leftrightarrow \,} \newcommand{\imp}{\, \Rightarrow \,} \newcommand{\ld}{\ldots} \newcommand{\mto}{\mapsto} \)

1. \( R \) を単位元をもつ可換環とする. このとき, \( a \in R \) に対して, \[ \text{\( a \) が可逆} \imp \text{\( a \) は零因子ではない} \] が成り立つ.

なぜなら, \( a \in R \) が可逆であれば, \( b \in R \) に対して, \[ ab = 0 \imp b = 0 \] が成り立つからである.

2. 一般に, 逆は成り立たない. 例えば, \( R = \ZZ \) に対してそうである. このとき, \( 0 \), \( \pm 1 \) 以外の要素は, 零因子でなく, 可逆でもない.

3. ところが, \( R \) が有限であれば, 逆も成り立つ: \[ \text{\( a \) が可逆} \equ \text{\( a \) は零因子ではない}. \]

4. なぜなら: 任意の \( a \in R \) に対して, \( R \) 加群としての準同型 \( \r_a \col R \to R \) を \[ \r_a(x) = ax \] で定める.

このとき, \begin{align} \text{\( a \) が可逆} &\equ \text{\( \r_a \) が同型}, \\[0.8em] \text{\( a \) が零因子} &\equ \text{\( \r_a \) が単射でない} \end{align} である.

したがって, \begin{align} \text{\( a \) が可逆} &\equ \text{\( \r_a \) が同型} \\[0.8em] &\equ \text{\( \r_a \) が単射} \\[0.8em] &\equ \text{\( a \) は零因子でない} \end{align} である. ここで, 有限集合から自身への単射全射となることを用いた. //

5. 別のやり方もある: 非可逆元 \( a \in R \) が零因子であることを示す.

\( R \) は有限であるので, \[ a,\, a^2, \, a^3, \, \ld \] のすべてが異なることはできない: ある \( m < n \) に対して, \begin{align} &a^m = a^n. \\[0.8em] \therefore \,\, &a^m (a^{n-m} - 1) = 0. \end{align}

\( b := a^{n-m} - 1 \) とおくと, \( a \) は非可逆であるので, \[ a^m b = 0, \quad b \ne 0. \]

さて, \[ a^k b \ne 0, \quad a^{k+1} b = 0 \] となる \( k \ge 0 \) が存在する. 存在しないとすると, \[ a^k b \ne 0 \imp a^{k+1} b \ne 0 \quad (\all k \ge 0) \] であるので, \[ a^0 b \ne 0 \imp a^1 b \ne 0 \imp a^2 b \ne 0 \imp \cd \] となり, これは \( a^m b = 0 \) に矛盾するからである.

そのような \( k \) に対して, \[ a (a^k b) = 0, \quad a^k b \ne 0 \] であるので, \( a \) は零因子である. //