余有限位相: \( \mathrm{T}_1 \) だがハウスドルフでない位相

\( \newcommand{\rmT}{\mathrm{T}} \newcommand{\oo}{\infty} \newcommand{\sm}{\setminus} \newcommand{\emset}{\emptyset} \newcommand{\nin}{\not\in} \newcommand{\brc}[1]{\left\{ #1 \right\}} \)

1. 位相空間 \( X \) の2点を開集合で分離することについて, 次の2つの条件が考えられる.

\( \rmT_1 \) 条件:

\( X \) の異なる2点 \( x \) と \( y \) が与えられたとき, \( x \) の開近傍で, \( y \) を含まないものが存在する.

\( \rmT_2 \) 条件, あるいはハウスドルフ条件:

\( X \) の異なる2点 \( x \) と \( y \) が与えられたとき, \( x \) の開近傍と \( y \) の開近傍で, 互いに交わらないものが存在する.

この \( \rmT \) とは一体何か? \( \Leftarrow \) Wikipedia によると,「分離公理」を意味するドイツ語の頭文字だそうです.

2. ハウスドルフ空間\( \rmT_1 \) 空間であるので, \( \rmT_1 \) 空間のクラスはハウスドルフ空間のクラスを含んでいる.

\( \rmT_1 \) 空間のクラスはハウスドルフ空間のクラスより真に大きいだろうか? すなわち, \( \rmT_1 \) 空間であって, ハウスドルフ空間でないものは存在するだろうか?

存在する. 以下でその1つの例を見る.

3. \( X \) を集合とし,

  • \( X \) 自身, および
  • \( X \) の有限部分集合

閉集合として, \( X \) に位相を定める.

4. 本当に位相を定めているか? 閉集合の3つの公理を確かめればよい:

(1)空集合と \( X \) 自身は閉集合である. \( \Leftarrow \) 自明.

(2)閉集合族の共通部分は閉集合である. \( \Leftarrow \) 閉集合族が \( X \) だけで構成されていれば, 共通部分は \( X \) であり, 閉集合族の中に有限集合があれば, 共通部分は有限集合である.

(3)2つ閉集合の和は閉集合である. \( \Leftarrow \) 両方とも有限集合であれば, 和は有限集合であり, どちらかが \( X \) であれば, 和は \( X \) である.

5. この位相は, \( X \) 上の「余有限位相」と呼ばれる. これは開集合に注目した呼び方である: 余りが有限な集合が開集合であるので.

6. さて, \( X \) が無限集合であるとき, この位相は \( \rmT_1 \) だがハウスドルフでないことを示したい.

\( \rmT_1 \) であること:

\( X \) の異なる2点 \( x \) と \( y \) が与えられたとき, \( x \) の開近傍として \[ X \sm \brc{y} \] をとれば, これは \( y \) を含まない.

ハウスドルフでないこと:

これは空でない2つの開集合 \( U \) と \( V \) が必ず交わることから分かる.

実際, \( U \) と \( V \) の補集合は有限集合であるので, ある有限集合 \( A \) と \( B \) が存在して, \begin{align*} U &= A^c, \\[0.8em] V &= B^c \end{align*} と書けるが, このとき, \[ U \cap V = A^c \cap B^c = (A \cup B)^c \ne \emset \] である. これが空集合でないのは, \( A \cup B \) が有限集合であり, 無限集合である全体集合 \( X \) とはなりえないからである.

7. この空間は妙な空間である: \( (x_n)_{n = 1}^{\oo} \) をすべての値が相異なる \( X \) の点列とすると, これは \( X \) のすべての点に収束する.

なぜなら:

\( x \) を \( X \) の任意の点とし, \( x \) の任意の開近傍 \( U \) をとる. \( U \) の補集合は有限集合であるので, 十分大きな \( N \) をとれば, \( N \) より先の番号 \( n \) では, \[ x_n \nin U^c, \] すなわち, \[ x_n \in U \] となる. これは点列 \( (x_n)_{n = 1}^{\oo} \) が \( x \) に収束することを意味している. \( x \) は任意であったので, この点列は \( X \) のすべての点に収束する. //

8. ハウスドルフ空間ではこのようなことは起こらない: ハウスドルフ空間の点列が収束すれば, その収束先は一意的である.