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非可測集合は存在する(2)

\( \newcommand{\e}{\varepsilon} \newcommand{\l}{\lambda} \newcommand{\L}{\Lambda} \newcommand{\bbR}{\mathbb{R}} \newcommand{\bbN}{\mathbb{N}} \newcommand{\bbZ}{\mathbb{Z}} \newcommand{\bbQ}{\mathbb{Q}} \newcommand{\oo}{\infty} \newcommand{\ss}{\subset} \newcommand{\emset}{\emptyset} \newcommand{\Cup}{\bigcup} \newcommand{\m}{m^{*}} \newcommand{\ld}{\ldots} \newcommand{\imp}{\Longrightarrow} \newcommand{\equ}{\Longleftrightarrow} \newcommand{\set}[2]{\left\{ #1 \mathrel{} \middle| \mathrel{} #2 \right\}} \newcommand{\prn}[1]{\left( #1 \right)} \)

前回の続き.

有界集合 \( A \ss \bbR \) が与えられたとき, 次の4条件をみたす集合族 \[ E_1, \, E_2, \, \ld \] を構成したい:

  1. (等外測度条件)外測度が等しく,
  2. (直和条件)互いに交わらず,
  3. (一様有界条件)一様有界であり,
  4. (被覆条件)\( A \) を被覆する.

当然ながら, \( A \) が有界でなければ, このような被覆は存在しない.

1. 外測度の等しい集合族はどのようにして得られるか? それは, 1つの集合 \( E \) の平行移動族として得られる: \[ (E + \l)_{\l \in \L}. \]

2. ここで欲しいのは, 可算無限な集合族である. 簡単に思い付くのは, \( \L = \bbN \), \( \bbZ \), \( \bbQ \) などであるが, \( \L = \bbQ \) ととるとうまくいく. これは, 議論の要点と言ってよい.

3. \( \L = \bbQ \) のままでは一様有界条件がみたされないので, \( b > 0 \) に対して, \[ \L = \bbQ \cap [-b, b] \] を考える. こうしても \( \L \) は可算無限のままであり(\( \bbQ \) の部分集合であるので可算であり, 十分大きな \( n \) に対して \( 1/n \) を含むので無限である), 有界な集合 \( E \) に対して \[ (E + \l)_{\l \in \L} \] は, 一様有界可算無限集合族となる(\( E \) が \( [-M, M] \) に含まれるとすれば, \( E + \l \) はすべて \( [-(M + b), M + b] \) に含まれる).

4. 直和条件がみたされるようにしたい. 有理数 \( \l \ne 0 \) に対して \( E \) と \( E + \l \) が重ならないためには, \( E \) の異なる2元の差が無理数であればよいが, 実はこの条件だけで十分である: 任意の実数 \( \l_1 \), \( \l_2 \) に対して, \[ [E + \l_1] \cap [E + \l_2] = \emset \quad \equ \quad E \cap [E + (\l_1 - \l_2)] = \emset \] であるが(交わっていない集合を平行移動しても交わっていないので), 異なる \( \l_1 \), \( \l_2 \in \L \) に対しては, \( \l_1 - \l_2 \) はゼロでない有理数であるので, 右辺は常に真である.

5. \( E \) を異なる2元の差が無理数である有界集合としたいのだが, 被覆条件のためには, \( E \) にできるだけたくさんの要素をもたせた方がよい. そこで, \( E \) を \( \bbR / \bbQ \) の有界な完全代表系とする. (そのようなものはとれる. 例えば, \( \e > 0 \) とするとき, すべての代表元を \( [0,\e] \) 内にとることができる.)

6. \( E \) が \( [-M, M] \) に含まれるとき, 集合族 \[ (E + \l)_{\l \in \L} \] は \( [-(b - M), b - M] \) を被覆する(\( b \) は \( M \) より大きいとする): 任意の \[ x \in [-(b - M), b - M] \] に対して, それと同値な \( e \in E \) をとれば, \[ \l := x - e \in \bbQ \quad \text{かつ} \quad |\l| \le |x| + |e| \le (b - M) + M = b \] であるので, \[ \l \in \bbQ \cap [-b, b] \] であり, \[ x = e + \l \in E + \l. \] したがって, どのような有界集合も \( b \) を十分大きくとれば, この集合族で被覆される.

7. これで, 求める4つの条件をみたす集合族が構成され, 非可測集合の存在についても示された.

1. 議論が前回と今回にまたがったので, その要点を振り返っておく: 非可測集合の存在は, 次の2つの事実から示された.

(1)外測度正の集合は, 測度が等しく, 互いに交わらない一様有界な集合族 \[ E_1, \, E_2, \, \ld \] では被覆できない.

(2)任意の有界集合は, 外測度が等しく, 互いに交わらない一様有界な集合族 \[ E_1, \, E_2, \, \ld \] で被覆できる.

2. 外測度正の有界集合を任意に選び, それに対して, 2番目の事実が主張する被覆 \[ E_1, E_2, \ld \] を1つとるとき, \( E_n \) のどれかは非可測でなければならないからである.

3. 実際には, より具体的に, \( \bbR / \bbQ \) の有界な完全代表系はすべて非可測であることが示されている. \( E \) を \( \bbR / \bbQ \) の有界な完全代表系とするとき, (2)の \( E_1 \), \( E_2 \), \( \ld \) はすべて \( E \) の平行移動にとれるからである.

4. "有界" という仮定は落とすことができる: \( \bbR / \bbQ \) の完全代表系はすべて非可測である. その理由は以下の通りである.

5. まず, 次の事実に注意する: \( E \) を \( \bbR / \bbQ \) の完全代表系とするとき, \( E \) の各元に, 各元ごとの有理数を加えても, それは依然として \( \bbR / \bbQ \) の完全代表系である. すなわち, \[ r_e \in \bbQ \] であれば, \[ \set{e + r_e}{e \in E} \] は \( \bbR / \bbQ \) の完全代表系.

6. したがって, \[ E' := \set{e - [e]}{e \in E} \ss [0, 1) \] は \( \bbR / \bbQ \) の完全代表系である(\( [e] \) は \( e \) の整数部分). もし \( E \) が可測であれば, \( E' \) も可測でなければならない. なぜなら, \[ E_n := E \cap [n, n+1) \] とおくとき, \[ E' = \Cup_{n \in \bbZ} \set{e - n}{e \in E_n} = \Cup_{n \in \bbZ} (E_n - n) \] であるからである(\( E_n \) は可測, したがって \( E_n - n \) も可測であるので). しかし, \( E' \) は有界であるから, これは既に示した事実に矛盾する.

7. 次回へ続く.