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複素整数と有限体の世界(21)ー第 II 部 基本概念ー素因数分解の一意性

以前, 仮説 B'' から仮説 B' (素因数分解の一意性)を導きました. これらの仮説は以下のようなものでした:
(仮説 B') 互いに同伴でない複素素数 \( \pi_1 \), \( \ldots \), \( \pi_r \) と単数 \( \delta \), \( \varepsilon \) に対して, \[ \delta \, \pi_1^{a_1} \, \cdots \, \pi_r^{a_r} = \varepsilon \, \pi_1^{b_1} \, \cdots \, \pi_r^{b_r} \quad \left(a_h, \, b_h \ge 0 \right) \] ならば, \[ \delta = \varepsilon, \quad a_h = b_h \quad \!\! \left(1 \le h \le r \right) . \]
(仮説 B'') \( \alpha \), \( \beta \) を複素整数とし, \( \pi \) を複素素数とする. このとき, \[ \pi \mid \alpha \, \beta \, \Longrightarrow \, \pi \mid \alpha \,\,\, \text{または} \,\,\, \pi \mid \beta. \]
今回は逆に, 仮説 B' から仮説 B'' を導きます.
素数の積への分解
0 でも単数でもない複素整数 \( \alpha \) は必ず複素素数の積へと分解されます. すなわち, ある複素素数 \( \pi_1 \), \( \ldots \), \( \pi_r \) が存在して, \[ \alpha = \pi_1 \cdots \pi_r \] が成り立ちます.
ノルムに関する帰納法で行います. 容易ですので, 詳細は省略したいと思います.
説 B' から仮説 B'' を導く
\( \pi \) を複素素数, \( \alpha \), \( \beta \) を複素整数とし, \[ \pi \mid \alpha \, \beta \] とします. このとき, ある複素整数 \( \gamma \) が存在して, \[ \pi \, \gamma = \alpha \, \beta \] となります.

1. \( \alpha \), \( \beta \), \( \gamma \) を複素素数の積へと分解します(上で述べたことにより可能です):

\( \alpha \), \( \beta \), \( \gamma \) を複素素数の積へと分解して, \begin{align} \alpha &= \pi'_1 \, \cdots \, \pi'_s, \\[0.5em] \beta &= \pi''_1 \, \cdots \, \pi''_t, \\[0.5em] \gamma &= \pi'''_1 \, \cdots \, \pi'''_u, \end{align} とします. 右辺に現れた素数の中から, 互いに同伴でないものを選べるだけ選び出し, それらを \( \pi_1 \), \( \ldots \), \( \pi_r \) とします. このとき,

  • \( \diamondsuit \quad \)\( \pi_1 \), \( \ldots \), \( \pi_r \) は互いに同伴でない,
  • \( \diamondsuit \quad \)右辺の素数は \( \pi_1 \), \( \ldots \), \( \pi_r \) のどれかに同伴,
が成り立ちます. 右辺の素数をすべて
単数 \( \, \times \,\, \pi_h \)
の形に書くことにより, \( \alpha \), \( \beta \), \( \gamma \) は次のように表されます: \begin{align} \alpha &= \varepsilon \, \pi_1^{a_1} \, \cdots \, \pi_r^{a_r}, \\[0.5em] \beta &= \delta \, \pi_1^{b_1} \, \cdots \, \pi_r^{b_r}, \\[0.5em] \gamma &= \omega \, \pi_1^{c_1} \, \cdots \, \pi_r^{c_r}. \end{align} ここで, \( \varepsilon \), \( \delta \), \( \omega \) は単数で, \( a_h \), \( b_h \), \( c_h \) は 0 以上の整数です.

2. 仮説 B' を適用します:

等式 \( \pi \, \gamma = \alpha \, \beta \) より, \[ \omega \, \cdot \, \left( \pi^1 \, \pi_1^{c_1} \, \cdots \, \pi_r^{c_r} \right) = \varepsilon \, \delta \, \cdot \, \left( \pi^0 \, \pi_1^{a_1 + b_1} \, \cdots \, \pi_r^{a_r + b_r} \right). \] \( \pi \) が \( \pi_1 \), \( \ldots \), \( \pi_r \) のどれとも同伴でないとすれば, 仮説 B' により

\( 1 = 0 \quad \) (\( \pi \) の指数が等しい)
となりますので, ある \( 1 \le h \le r \) に対して
\( \pi \sim \pi_h \quad \) (同伴)
でなければなりません. このとき, \[ c_h + 1 = a_h + b_h \ge 1 \] より, \[ a_h \ge 1 \quad \text{または} \quad b_h \ge 1. \] したがって, \[ \pi \mid \alpha \quad \text{または} \quad \pi \mid \beta \] が成り立ちます. 以上で仮説 B'' が導かれました. (証明終)

今回の考察で次のことが分かりました:
「仮説 B'' は ”素因数分解の一意性” に他ならない.」