イデアルの共通部分と積

\( \newcommand{\p}{\pi} \newcommand{\finv}{f^{-1}} \newcommand{\II}{\mathbb{I}} \newcommand{\all}{\forall} \newcommand{\brc}[1]{\left\{ #1 \right\}} \newcommand{\cc}{\circ} \newcommand{\col}{\, \colon \,} \newcommand{\cd}{\cdots} \newcommand{\Cap}[2]{\bigcap_{#1}^{#2}} \newcommand{\Cup}[2]{\bigcup_{#1}^{#2}} \newcommand{\emset}{\emptyset} \newcommand{\equ}{\, \Leftrightarrow \,} \newcommand{\imp}{\, \Rightarrow \,} \newcommand{\ld}{\ldots} \newcommand{\mto}{\mapsto} \newcommand{\nin}{\not\in} \newcommand{\prn}[1]{\left( #1 \right)} \newcommand{\sm}{\setminus} \newcommand{\ss}{\subset} \newcommand{\thf}{\therefore} \newcommand{\tm}{\times} \newcommand{\vd}{\vdots} \)

0. 目標: \( I_1 \), \( \ld \), \( I_n \) が(単位元をもつ)可換環イデアルであるとき, 一般に, \[ I_1 \cd I_n \ss \Cap{k=1}{n} I_k \] である. どの2つも互いに素であれば, 等号が成り立つことを示したい.

1. 次の事実を思い出しておく: 可換環の間の全射準同型 \( f \col R \to S \) は, イデアルの間の全単射 \[ \brc{\text{\( \ker f \) を含む \( R \) のイデアル}} \to \brc{\text{\( S \) のイデアル}}, \quad I \mto f(I) \] を引き起こす.

なぜなら: \( \finv(J) \) \( \mto \) \( J \) が逆写像となっているので. //

2. 次の事実に注意する: 可換環の間の準同型 \( f \col R \to S \), および \( R \) のイデアル \( I \), \( J \) に対して, \[ f(IJ) = f(I) f(J). \]

なぜなら: 左辺は \[ f(ij) , \quad i \in I, \,\, j \in J \] により生成され, 右辺は \[ f(i) f(j) \quad, i \in I, \,\, j \in J \] により生成されるので. //

3. 以下, \( R \) を可換環とする. \( R \) のイデアル \( I \) と \( J \) が互いに素であるとは, \[ I + J = R \] が成り立つことである.

4. \( R \) のイデアル \( I \) が引き起こす自然な射影を \( \p_I \) と書く: \[ \p_I \col R \to R/I, \quad x \mto x + I. \]

補題 \( R \) のイデアル \( I \) と \( J \) に対して, \[ \text{\( I \) と \( J \) は互いに素} \equ \p_I(J) = R/I. \]

なぜなら: \( \p_I(J) = \p_I(I + J) \) である. イデアルの対応定理より, \[ \p_I(I + J) = R/I \equ I + J = R \] である. //

5. 補題 \( R \) のイデアル \( I \) は, \( R \) のイデアル \[ J_1 , \quad \ld , \quad J_n \] のそれぞれと互いに素であるとする. このとき, \( I \) と積 \[ J_1 \cd J_n \] は互いに素である.

なぜなら: 仮定より, \[ \left\{ \begin{align} \p_I(J_1) &= R/I \\[0.8em] \cd \,\,\,\, & \\[0.8em] \p_I(J_n) &= R/I \end{align} \right. \] であるので, \[ \p_I(J_1 \cd J_n) = \p_I(J_1) \, \cd \, \p_I(J_n) = R/I \] である. //

6. 以下, どの2つも互いに素な \( R \) のイデアル \[ I_1 , \quad \ld , \quad I_n \] を考え, \( I_k \) 以外のイデアルの積を \( \II_k \) と書く: \[ \II_k := I_1 \, \cd \, I_{k-1} \, I_{k+1} \, \cd \, I_n \quad (1 \le k \le n). \]

補題 \[ \II_1 + \cd + \II_n = R. \]

なぜなら: \[ \II := \II_1 + \cd + \II_n \] とおく. \[ I_1 \cd I_n \ss \II \] であることに注意する.

\( I_k \) と \( \II_k \) は互いに素であるので, \( I_k \) と \( \II \) も互いに素である. したがって, \begin{align} &\p_{\II}(I_k) = R/\II \quad (1 \le k \le n). \\[0.8em] \thf \,\,\, & \p_{\II} (I_1 \cd I_n) = R/\II. \end{align} これより, \[ R = \II + I_1 \cd I_n \ss \II \] である. //

7. 目標の命題: \[ \Cap{k=1}{n} I_k \ss I_1 \cd I_n. \]

なぜなら: \[ \II_k \, \prn{ \Cap{k=1}{n} I_k } \, \ss \, \II_k \, I_k \, = \, I_1 \cd I_n \quad (1 \le k \le n) \] である. 等式 \[ R = \II_1 + \cd + \II_n \] の両辺に \( \Cap{}{} I_k \) を掛けると, \[ \Cap{k=1}{n} I_k = (\II_1 + \cd + \II_n ) \, \prn{ \Cap{k=1}{n} I_k } \ss I_1 \cd I_n \] となる. //